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きまぐれグレオ

 我輩は猫である・・・世紀の大作の冒頭をパクッて申し訳ないが、この一言に勝る表現がみつからない・・・
 我輩はとあるとても小さな商店街の片隅で産まれた。所謂、野良猫である。

 だが、この街の人間達は皆、人情味があって優しくて我輩はとても気に入っている。
 我輩は”アニキ”と呼んでいるのだが、一応、人間界では飼い主となっているアニキの家をねぐらにしている。
 なかでも、夜は母ちゃんと一緒に眠るのが我輩のお気に入りである。
 父ちゃんはいつもそれをニコニコと見守ってくれているのだ。それがなんとも有り難い。
 だが、我輩の野良の血が時々騒ぎ出す。映画の寅さんのように放浪の旅にでるのが我輩の癖である。
 旅と言っても町内を巡り歩くのだ。アニキも優しく見送ってくれるし、旅で出会ういつも?の仲間達もみんな優しく迎えて
 くれるのだ。我輩はこの空間がなんとも言えず好きなのだ。
 疲れてアニキのうちに戻ると家族もまた優しく迎えてくれる。
 何一つ不満は無い。
 最近、体調を崩してご飯が食べづらくなってきた。残念だが、どうやらお迎えが近づいたようだ。
 体はキツイがお世話になった街のみんなにも一言礼が言いたくて我輩はまた旅に出た。
 家族に心配させてしまうのはなんとも心苦しいところだが、やはり街のみんなに会っておきたいのだ。
 どうにか、我輩は旅を終え、アニキの家にたどり着いた。だが、もう体力は残っていなかった。
 大好きな母ちゃんの布団に潜り込んで我輩の命は尽きてしまった。

 猫は死に姿を見せないなんて言うが、我輩はやっぱり大好きな家族と一緒に最期の時を迎えたかったのだ。
 我輩はこの街で生まれて幸せだった。なにも不満は無い。
 逝くには若すぎるって?そんな事を気にしないでおくれ。短命は野良の宿命なのさ。我輩に後悔は無い。
 そんな事より、勝手気ままな我輩の生き方を優しく見守ってくれた街のみんなに本当に感謝している。

 最期にみんなにひとつだけ頼みがあるんだ。この素敵な人情をいつまでも忘れないでくれるかい?
 きっと、またいつか流れ者の我輩の仲間がやってくるかもしれないが、我輩同様優しくしてやって欲しい。
 そしたら、そいつに我輩からカラスのやつらが人間様に悪さしないように見回るように伝えておくから・・・
 そうそう、花束を手向けてくれてありがとう。嬉しかったぁ〜!

 この見慣れぬオヤジが我輩の体を弄繰り回し、挙句、花で我輩の体を包んでしまった。
 なんともこっ恥ずかしいが、大好きな街の方が手向けてくれた綺麗な花だからね。しょうがない・・・

 どうやら時間が来たようだ。我輩はまた旅立つが、いつまでもいつまでも素敵な街であっておくれ!
 それじゃ、ちょっと行ってくる。いままで本当にありがとう・・・


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